リスクを持つ歯へのアプローチ

臨床歯科医のステップアップ研修(Ⅰ)

リスクを持つ歯へのアプローチ

歯はどこまで活用できるのかをテーマに,1本の歯の持つリスクの本態と診断,治療のリスクと治療法について,豊富な症例提示で解説

著者 宮地 建夫
藤関 雅嗣
野嶋 昌彦
ジャンル 歯科補綴
出版年月日 2005/10/20
ISBN 4930881765
判型・ページ数 A4変・168ページ
定価 9,900円(税込)
在庫 絶版

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口腔全体の診断も,1本の歯の状態を知ることから始まります.  その歯が健全であれば問題はないのですが,もし仮に動揺や傾斜といった問題を伴っているとしたら,そのリスクの大きさを評価し,診断・治療方針の選択に反映させなければなりません.もちろん,抜歯をして口腔内環境を整えるという方法も重要な選択肢ですが,抜歯による歯列の断絶とその歯が持つリスクとではどちらが重いのか,もう一度点検を行い,判断の根拠を整理しておく必要があると思います.
     * * *
 歯はどこまで活用できるのか―本書ではこのような視点から,1本の歯の持つリスクの本態と診断,治療にかかわるリスクと治療法などについて,豊富な症例提示により,いろいろな視点からリスクの解明を行っています.  1本の歯のリスクをよく知り,そこから口腔内全体を見渡すことができれば,いままでと違った処置方針を手にすることができるでしょうし,臨床にも幅とゆとりができるはずです.一見遠回りにみえるこの道が,臨床においては,患者さんからの信頼をかちとる一番の近道といえるのではないでしょうか.

1
“健全なものは残す.そして,この章は抜髄を過去のものにした記録集だ”
深いカリエス―歯髄を守る…斉藤佳雄
抜髄はできるだけ避けたいが,歯髄保存の限界をどう見極めるのか? 歯髄保護の術式や生活歯の修復法について述べる.

2
“縁下カリエスとは,実はアタッチメントとの駆け引きである”
縁下カリエス―歯の保存の限界…大坪青史
縁下カリエスの種類と分類,診断と保存の限界点,歯の挺出や歯冠延長術の実際,縁下カリエス治療の長期症例を提示する.

3
“介入のリスクと放置のリスク,どちらが大きいか峻別しなければならない”
根尖病巣…斎藤純一・藤村三良
X線写真にみられる根尖部の透過像は本当に疾患の前兆なのか.しかし,原因が特定されても治療介入するか,非介入とするか,そのリスクの大きさに悩むことが多い.その対応策とは?

4
“地震と似て,土台と力の関係が,揺れを考えるうえでは不可欠だ”
動揺歯…千葉英史・井上真由美
動揺の性質を把握し,その原因を探って治療計画を立てる.システムとしてなかなか確立できない動揺歯の治療計画について症例を示しつつ提言する.

5
“根分岐部病変―処置法を選ぶ目とタイミングがリスクの分岐点となる”
根分岐部病変…高橋敬人・壬生秀明・木暮隆司
歯の持つリスク以外に,治療を行ううえでのリスクがある.根分岐部病変治療の場合も根分割後の根管ならびに補綴治療に難渋するケースは多いという.その対策は?

6
“破折といっても病態は多様,処置をマスターするには骨が折れる”
破折歯…奥平紳一郎・石黒長一
外傷以外の原因,たとえば咬合力が原因となって破折した歯を残すことは,また新たなリスクを生み出すことでもある.破折歯はどこまで活用でき,どう活用すべきなのだろう.


7
“智歯を生かすも,殺すも,歯科医の目と技量次第だ”
智歯…高野正行
智歯は,それが歯列に悪影響を及ぼすか否かがわからないというのが大きなリスクである.さらに経年変化の影響も強く,抜歯の必要性が出てきても加齢により難症例になってしまう場合もある.

8
“傾斜歯への対応は,局所の視点と口腔内全体の視点が必要である”
傾斜歯…山本英之
傾斜歯がすべてリスクを持つわけではなく,また,すべて整位させる必要もない.その境界について豊富な症例写真とともに解説する.併せて整位の術式もステップを追って説明.

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