書評『別冊2018 これでOK! 基本から学ぶ歯科用コーンビームCT』若林健史

HYORON Book Review - 2018/06/20



レビュアー/若林健史
(東京都渋谷区・若林歯科医院)

歯科用コーンビーム CT を取り巻く歯科医療の現状

 平成24年診療報酬改定において,歯科用コーンビームCT(以下,CBCT)検査が保険導入され,わが国における CBCT の使用頻度は増加の一途をたどっている.埋伏智歯の状況把握,腫瘍や顎関節疾患の診断など,口腔外科領域において有用な検査法であるのみならず,根管治療や歯周治療,インプラント治療,矯正治療などの日常診療においてもその活躍の場を広げている.

 しかしながら,CBCT の基本原理から実際の臨床への応用を包括的に学べる本は乏しく,いざ勉強しようとなると,放射線学や各臨床科目の教科書を何冊も読み, 散在するCBCT の記載に目を通す必要があった.

本書の内容について

 このような現状を踏まえ,CBCTを日常診療に使用する歯科医師や,これから導入を考えている歯科医師のニーズに応えるべく,その基本原理や特徴,画像診断に必要な解剖学の知識,さらには活用の指針となるワークフローなどを一冊にまとめた本書が発刊された.

 まず Part1では,「歯科用コーンビーム CT を使いこなすためのポイント」として,最低限押さえておくべき正常解剖像から,撮影時のコツ,保険算定における留意事項などが述べられている.

 Part2では,「歯科用コーンビーム CT を活用した日常歯科臨床へのデジタルワークフロー」として,CBCT や他のデジタル機器を活用した,最新の治療が多数紹介されている.実際の症例とその解説が提示されているため,非常に興味深く読むことができる.

 Part3では,「分野別 歯科用コーンビーム CT の活用のポイント」として,各分野のスペシャリストが,抜歯から歯内療法,前歯部修復補綴,歯周組織再生療法,インプラント埋入,歯性上顎洞炎,歯の自家移植,顎関節症など,多岐にわたる分野での CBCT 活用のポイントをそれぞれ記している.臨床の場面で困った際には,この Part3を見れば分野別にすぐ情報が得られるようになっており,大変便利である.

 Part4では,「矯正治療における歯科用コーンビーム CT の活用のポイント」として,セファログラムと比較した CBCT 像の利点や,読像ポイント,CBCT を活用したカスタムメイド矯正治療についても詳述されている.

 最後に,Part5では「各メーカー歯科用コーンビーム CT の最新情報」として,メーカーごとの最新 CBCTの徹底比較を行っている.

お勧めの本書活用法

 まず,これから CBCT の導入を考えている読者においては,各メーカーの CBCT の特徴が比較されている Part5が非常に有用であろう.価格や寸法,車椅子での撮影可否など詳細に記載されているため,それぞれの目指す診療スタイルや方向性によって選ぶことができる.

 また, すべての章にわたって「POINT」という小見出しがあり,その項目を見るだけでも重要な点やコツが把握できるようになっているため,忙しい臨床家にとっては非常にありがたい.私自身は,歯周治療,根管治療,インプラント治療で主にCBCT を使用しているが,本書を一読したことにより,CBCT をより効果的に明日からの診療に活用することができると感じた.皆さんにも,ぜひお勧めしたい一冊である.


PDF版

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